こんにちは。九条です。
司法書士試験の基準点発表が話題になっていますが、そもそも基準点が何なのか分からないという方がいました。
私が受験生だった頃も、基準点が何なのか分からないという受験生を見たことがあります。
司法書士試験に合格するための受験戦略を立てる上で、基準点について知っておくことは必須です。
そこで今回は、初心者向けとなりますが、司法書士試験がどのような試験であるかについてと、基準点とは何なのかについて解説します。
既に知っている方も多いと思いますので、そういう方は本記事を読んでもあまり得られるものはないと思います。
また、今回の記事は、事実を淡々と述べた記事であり、私の意見はあまり入っていません。
参考記事
司法書士試験とは何なのか?について考える前に、そもそも司法書士とは何か?という疑問があると思います。
これについては未完成ですが、次の記事があります。
未完成とは、司法書士という資格の使いにくい面や制約事項の解説がメインになっており、司法書士の仕事内容(簡裁代理ができて、登記ができて、後見ができて)について触れていないからです。
司法書士の仕事内容については、既に情報が腐るほどあるので、私が書くまでも無いと考えて後回しにしているのですが、いずれ書きます。
司法書士の仕事内容が気になる方は、別途 Google 等で調べてください。
司法書士試験とは?
文字通り、司法書士になるために必要な試験です。
ただし、司法書士試験に合格せずに司法書士になる方もいます。
司法書士法 第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する。
一 司法書士試験に合格した者
二 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、
法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの
ここで規定する2号が司法書士試験に合格せずに司法書士になる方法ですが、2号に該当して司法書士になる方はかなり稀(1年に1人程度)ですし、本 Web サイトの趣旨として「資格試験」がテーマですから、詳しくは触れません。
参考記事の方でも述べていますが、司法書士試験に合格したからと言って直ちに司法書士になれるわけではありません。登録という手続きを経て司法書士になることができて、更に登録すると経費が発生したり、制約事項が付いてきます。登録するまでは、司法書士の名称を用いることができず、名刺の肩書に使用することもできないので気を付けてください。これに違反すると刑事罰が科されます。
相対評価試験
司法書士試験の大きな特徴として相対評価であることが挙げられます。
相対評価とは、予め合格点が決まっておらず、予め合格率が決まっていると言うことです。
これに対して絶対評価と言うのがあり、こちらは予め合格点が決まっていて、予め合格率が決まっていません。
具体的に言うと司法書士試験では、受験者数(出願者数)を分母として約4%が合格率に設定されおり、言い替えると成績が上位約4%以内にならなければ合格できません。(但、後述しますが司法書士試験には「基準点」という厄介な概念があり、上位約4%以内に入っても合格できないケースもあります。)
これに対して絶対評価試験では、自分が何位なのかは合格に関係がありません。合格点に達すれば何位であっても合格します。例えば基本情報技術者は午前午後共に60%以上正解することが合格点とされており、これを満たせば順位は関係なく合格します。
相対評価試験では合格率が試験の難易度を直接的に決定づけることになります。試験問題が易しくなれば自分も周囲も成績が良くなり、試験問題が難しくなれば自分も周囲も成績が悪くなるので、試験問題は合格難易度を決定づける要因にはなりません。司法書士試験なら、法務省が決めた予め決めた合格率が試験の難易度を決定づけていて、試験問題が難化しようが易化しようが、試験の難易度は変わりません。
司法書士試験の合格率が4%しかないのは、きちんと対策を取っていないお試し受験生がたくさんいるからだ、という主張をされる方がいますが、実際には、合格率は固定です。たとえ全員が合格レベルの実力を備えていたとしても、必ず不合格になる人は出てきます。
※司法書士試験の合格率は年々上昇しており、試験問題の難易度に関係なく、試験の難易度は易化傾向にあることになります。
絶対評価試験では試験問題が試験の難易度を直接的に決定づけることになります。試験問題が易しくなれば合格率が上昇し、試験問題が難しくなれば合格率が低下します。例えば、管理人は未合格ですが、行政書士試験は絶対評価です。行政書士試験は受験した年度によって大きく難易度が変わると言われています。平均して5%が合格率だと言われていますが、10%を超えた年もあります。
ギスギスします。
さて、相対評価試験は難易度が高いものになると、受験生の人間関係がギスギスします。
と言うのは受験仲間だと思っていても、実はライバルだからです。
受験生をしていると予備校やSNSで「受験仲間」ができることがあります。
ですが、受験仲間が合格すればするほど、自分が合格できる可能性は低くなりますし、逆に自分が合格すれば、その所為で他の受験生の誰かが不合格になります。
そのため、合格するには、どんなに綺麗事を吐いたところで、周囲を蹴落とさなければなりません。
例えば、受験仲間が、自分の不合格を本心では願っているんじゃないかと思う事があります。
この逆で、例えば、受験仲間が自分のことを絶対に受からないと見下しているんじゃないかと思う事もあります。
その証拠に、Twitter のような匿名ではない媒体(固定ハンドルネームがあるSNS)では、礼儀正しい発言をしている司法書士試験受験生が多いですが、その一方で、5ch のような匿名の媒体では馬事雑言の嵐になったりします。
人間の本性が見えて嫌だという人もいるかもしれませんが、これが現実だと思います。
改めて相対評価試験の意味
既に次のように述べました。
相対評価試験では合格率が試験の難易度を直接的に決定づけることになります。試験問題が易しくなれば自分も周囲も成績が良くなり、試験問題が難しくなれば自分も周囲も成績が悪くなるので、試験問題は合格難易度を決定づける要因にはなりません。司法書士試験なら、法務省が決めた予め決めた合格率が試験の難易度を決定づけていて、試験問題が難化しようが易化しようが、試験の難易度は変わりません。
これの意味するところは、司法書士試験ではあくまで周囲との比較で突き抜けて良い成績を取る必要があるのであって、満点を取る必要もないし、試験問題が難しい年に受験した場合は、少々成績がが悪くても、周りよりできていれば合格できると言うことです。
この性質から、司法書士試験は合格者なら誰でも取れるような問題を確実に正解する必要があり、合格者でも取れないような問題が出際された場合は失点しても良く、むしろそのような問題にかまけすぎるべきではないと言われています、
司法書士試験の構成
司法書士試験は大まかに3つの科目で構成されています。
- 午前択一(1問につき3点の35問、配点105点)
- 午後択一(1問につき3点の35問、配点105点)
- 午後記述(配点70点)
- 不動産登記法記述
- 商業登記法記述
(合計280点満点です。)
択一とは、マークシート方式の試験です。
記述とは、実際の模範解答を見るとイメージがつかみやすいです。
(参考資料)みとみ学園 – 平成27年 司法書士 試験解答速報
記述は事例が提示され、司法書士がどういう登記申請をすべきかという申請書を書かせる問題です。また、○○の理由を書きなさいと言った問題も出題されます。ですが、司法試験や高度情報処理技術者試験のように論文試験ではなく、暗記が通用します。出題形式が変わっただけで、記述も択一の延長だとも言われています。
午前択一の制限時間は2時間です。
午後択一と午後記述は制限時間を共有しており、3時間で両方を解かなければなりません。午後択一と午後記述の時間配分をどうするかは受験生の自由です。ですが、一般的に午後択一50分、不動産登記法記述65分、商業登記法記述65分の配分にするのが理想だと言われています。
司法書士試験の択一には11科目があり、それぞれ同じ配分で出題されるのではなく、例えば民法や不動産登記法は特に出題される問題数が多いです。具体的な科目と出題数については他に情報源がたくさんありますので、Google 等で検索するか予備校の体験講義を受けてください。
択一基準点
さて、基準点の話にに入ります。
基準点には択一基準点と記述基準点が存在しています。ここではまず、択一基準点について見ていきます。
択一基準点とは、法務省が設定する、午前択一及び午後択一で、最低でもこれだけの点数を取らないと、記述の採点に進めないという点数(足切)です。
午前択一、午後択一の両方に個別に基準点が設定され、両方が同時にそれ以上の点数になっていないと、記述の出来がどんなに良かったとしても、記述の採点に進めず、直ちに不合格が確定します。
このように、択一の基準点に引っかかって不合格になることを、択一基準点割れ、または足切と言います。また、午前午後共に択一の基準点以上の得点を出すことを択一基準点突破と言い、それを成し遂げた人を択一基準点突破者と言います。
もちろん、択一基準点突破者=合格者ではなく、合格には更なる関門がありますが、択一基準点を突破しないことには絶対に合格できません。
択一の基準点も、合格点同様に相対評価で決まります。つまり、予め上位何人(何パーセント)が記述の採点に進めると言うことが決まっていています。問題の難易度が変わっても記述の採点に進める人の割合は変わりません。
また、法務省は先に午前の択一基準点が決めてから、その後に午後の択一基準点を決めているという噂があります。
司法書士試験の択一を表記するとき、例えば、次のように表記することがあります。
33/30
これは私の本試験の成績ですが、この意味は、午前33問(99点)、午後30問(90点)獲れたと言うことです。
このように、択一の点数は点数そのものではなく、問題数で表記されることが多いです。
例えば今年(令和2年度)司法書士試験の択一の基準点は次の通りでした。
25/24
これは、午前25問(75点)、午後24問(72点)を意味しており、両方を満たした人、つまり午前択一で25問以上を獲得し、かつ午後択一で24問以上を獲得した人が記述の採点に進めることを意味します。
例えば昨年度(平成31年度)司法書士試験では、基準点は25/22でした。受験者数は約1万3千人で、択一基準点を午前午後共に突破した(記述の採点に進んだ)人は約2千人でした。
つまり、受験生の2割未満しか記述の採点に進んでいないことになります。
余談ですが、司法書士試験の中上級者なら択一基準点は突破して当たり前のような風潮が見られます。しかし、実際には、運が悪くて得点が下振れすると、自分には実力があると思っていても、あっさり基準点を割ることもあります。要するに油断は禁物ということであり、基準点を割らないためには、ギリギリ合格点を狙うのではなく、33/33のような圧倒的な点数を狙うべきだと私は思っています。
記述の基準点とは
択一基準点を突破した人には、更に記述基準点という関門があります。
択一と同様に、法務省から、記述で最低でもこれだけの点数を取らないと、不合格になるという点数が設定されます。
記述の基準点に引っかかって不合格になることを、記述基準点割れ、または記述の足切と言います。また、記述の基準点以上の得点を出すことを記述基準点突破と言い、それを成し遂げた人を記述基準点突破者と言います。
記述基準点突破者=合格者ではなく、合格には更なる関門がありますが、記述基準点を突破しないことには絶対に合格できません。
記述の基準点がどのように決まっているかどうかはよく分からない部分があると言われていますが、こちらも相対評価で決まると言われており、上位5割程度が基準点を突破できるように基準点が設定されることが多いです。
例えば昨年度(平成31年度)司法書士試験では、記述の採点に進んだのは約2千人だったのですから、記述の基準点を突破した人は、その50%で、約1千人程度だと見積もられます。
総点とは
記述の基準点を突破した人には、最後に総合合格点(総点)という関門があります。
この総合合格点とは午前択一の成績、午後択一の成績、記述の成績全部を合格した点数です。
総合合格点についても、法務省から基準が設定され、これを突破した人が最終的に司法書士試験に合格できます。
記述の基準点を突破したものの、総合合格点に足りずに不合格になることを、総点落ちと言います。
当然ですが、総合合格点も相対評価で決まります。全受験生の4%を合格させる点数が総合合格点に設定されるのです。
例えば去年(平成31年度)司法書士試験では、最終合格者が約600人で、記述の基準点を突破した人は約1千人程度ですから、約400人が総点落ちしたことになります。
この総合合格点があるため、択一はとりあえず基準点を突破しておけばよいという訳には生きません。択一も記述もできるだけ点数を稼いでおかなければ合格できません。
また、やや稀(合格者よりも稀)なケースですが、総合得点が合格点に達したのに、記述が基準点割れを起こす場合もあります。
そのため、記述が苦手というのもまずいです。択一は得意だが記述が致命的に苦手という場合、総合合格点を上回っても記述の基準点割れのリスクがあります。
関連記事
以下の記事も参考にしてください。
「足切」「総点落ち」「上乗せ」「択一逃切」「記述挽回」とは何か?
最後に
今回は司法書士試験の試験の概要について見ていきました。
以上のお話から、択一と記述の両方において基準点を超える点数を獲得することが必要だと言うことがお分かりいただけたかと思います。
ですが、択一と記述のどちらを重視すべきかと訊かれたら、私だったら圧倒的に択一だと回答します。
この理由は後程記事にしますが、択一が苦手な場合、択一で基準点を割り、どんなに記述の出来が良かったとしても採点してもらえないリスクがあるからです。
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