こんにちは。九条です。
今回は司法書士がどんな仕事なのかについて見ていきます。
このテーマを記事にする場合、司法書士は「登記」ができて「後見」ができて「簡裁代理」ができて…と言うお話になることが一般的だと思いますが、そう言うことを解説した情報源は腐るほど存在しているため、私が記事を書くまでもないと判断しました。いずれ記事にするかもしれませんが、優先度は低いと思っています。
ここで解説するのは、司法書士という資格の使いにくい面や、制約事項、その他、あまり触れられないことについてです。
こういう知識は、司法書士を目指す方が最初に知るべきことのひとつだと思ったため、記事にさせて頂きました。
私は司法書士登録をしておらず、実務も行っておりません。
そのため、あくまで机上の勉強で得た知識、聞きかじった知識、ネットで得た知識を元にして書いており、実務家の方からすると反対意見も有ろうかということを、最初にお断りしておきます。
参考資料
登録手続き
素人にありがちな誤解として、司法書士試験を突破すると、直ちに司法書士になれるというものがあります。
これは誤りです。
第八条 司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならない。
2 (省略)
実は、司法書士になるには、司法書士試験に合格した後、「登録」と言う手続きを踏まなければなりません。
第五十七条 第九条第一項の規定による登録の申請又は第十三条第一項の変更の登録の申請をする者は、その申請と同時に、申請を経由すべき司法書士会に入会する手続をとらなければならない。
2 (省略)
3 (省略)
司法書士登録をする場合は、その申請と同時に司法書士会に入会する必要があります。司法書士会は、各都道府県に設置されており、ロールプレイングゲームで言うところの「ギルド」をイメージしていただければと思います。
第七十三条 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 (省略)
3 司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
4 司法書士法人でない者は、司法書士法人又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
5 (省略)
以上の手続きを経てようやく、司法書士の業務が行えるようになるとともに司法書士を名乗れるようになります。登録する前に、司法書士の業務を行ったり、「司法書士」を名乗ったりすると犯罪となり、罰せられます。
第七十八条 第七十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 (省略)
第七十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第七十三条第三項の規定に違反した者
二 第七十三条第四項の規定に違反した者
三 第七十三条第五項の規定に違反した者
かなり重い罪です。
仮に司法書士試験に合格したからと言って、登録していない間は、就職面接で「司法書士です!」と名乗ってはいけません。これは犯罪です。後程記事にしますが、そもそも、司法書士は司法書士または司法書士法人以外の使用人(雇われ人)となることはできないため、司法書士登録をしたまま民間企業に就職することはできません。
懲戒
司法書士は非常に厳しいルールの上で仕事をすることになります。
重要なのはこの規定です。この条文は口述試験でそのまま言わせられる場合がありますし、筆記試験でも試験範囲なので覚えておく必要があります。
第二条 司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
後述しますが、この他にも司法書士には様々な義務が課されます。また「司法書士倫理」と呼ばれる規定があります。
これらに違反したり、犯罪を起こしたりすると、懲戒処分に処される場合があります。
第四十七条 司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は、当該司法書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 業務の禁止
懲戒処分を受けると「戒告」であっても、日本司法書士会連合会のHPに実名付きで晒されますので、信用がガタ落ちします。
実際に、日本司法書士会連合会のHPを見てみると分かりますが、様々な事由で懲戒処分を受けた方がいらっしゃいます。
非常に悪質なケースから、「えっ、こんなんで懲戒処分になるの?」と思うような事例まで様々です。
欠格事由
司法書士試験に合格しても次の事由に該当する方は、司法書士になれないため注意が必要です。これらが関係してくる方は少数派だと思いますが、読んでおくことをお勧めします。
第五条 次に掲げる者は、司法書士となる資格を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
二 未成年者
三 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
四 公務員であつて懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
五 第四十七条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
六 懲戒処分により、公認会計士の登録を抹消され、又は土地家屋調査士、弁理士、税理士若しくは行政書士の業務を禁止され、これらの処分の日から三年を経過しない者
特に注意が必要なのは第一項です。
「禁固以上の刑」とありますが、死刑>懲役>禁固>罰金>拘留>科料の順に重い刑となります。犯罪に関与してしまって懲役を食らい、資格を取って人生やり直そうと考える方はいるかもしれませんが、仮に試験に合格してもすぐには登録できない可能性があります。
なお、禁固以上の刑の執行猶予中の方は司法書士の欠格事由に該当してしまいますが、執行猶予を終えた後は司法書士になることができるとされています。
第二項も注意が必要で、未成年者が最年少合格することは良くありますが、未成年者も司法書士登録はできません。
登録拒否事由
第十条 日本司法書士会連合会は、前条第一項の規定による登録の申請をした者が司法書士となる資格を有せず、又は次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その登録を拒否しなければならない。この場合において、当該申請者が第二号又は第三号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、第六十七条に規定する登録審査会の議決に基づいてしなければならない。
一 第五十七条第一項の規定による入会の手続をとらないとき。
二 心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき。
三 司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき。
第二項と第三項を見てください。司法書士試験に合格して、かつ欠格事由に該当しない場合でも、日本司法書士会連合会の裁量次第では、登録できない可能性があります。
この規定を気にする方をたまに目にします。しかし、あくまで噂ですが、それほど重くない犯罪の前科がある程度では三項には該当しないと言われています。(あくまで噂ですから、合格したけど、三項で弾かれたという方がいても責任は持てません。)
業務禁止の処分を受けた場合、3年経過すると欠格事由に該当しなくなりますが、あまりに悪質な事由で業務禁止の処分を受けた場合は、再登録ができなくなると言われています。こちらも噂ですが、後見人になっておきながら横領をやらかして、業務禁止の処分を受けた場合は、二度と登録ができないと言われています。
なお、司法書士試験に資格剥奪と言う制度は無く、合格してしまえば資格は生涯有効ですが、この三項に該当すると、事実上の資格剥奪に近い状態となります。
司法書士の業務
「参考資料」の司法書士法3条をよくお読みください。
これが司法書士にできる業務です。ここに記載されいていないメジャーな業務として「後見」があります。
逆に言えば、ここに記載されていないことは司法書士の業務ではありません。たとえ「司法書士試験に合格していることが求められる仕事」を営利目的で業として行う場合でも、登録は必要ありません。具体的には、講師業です。普通、講師は司法書士試験に合格した人がなると思われますが、講師業は司法書士の業務には当たらないため、未登録でも講師になることはできると考えられますし、実際、未登録の講師はいらっしゃいます。
その他の義務や制約事項
司法書士には様々な義務や制約事項が課されます。
第二十条 司法書士は、法務省令で定める基準に従い、事務所を設けなければならない。
司法書士は事務所を設けなければなりません。
司法書士法施行規則 第二十条 司法書士は、司法書士会に入会したときは、その司法書士会の会則(以下「会則」という。)の定めるところにより、事務所に司法書士の事務所である旨の表示をしなければならない。
また、事務所には司法書士の事務所である旨の表示をしなければなりません。
このため、バーチャルオフィス(事務所の「住所」だけを貸すサービス)は事務所としては使えないと考えられます。つまり、司法書士として登録するには、事務所を所有してでもいない限り、家賃が発生することになります。ただし、自宅を事務所にする人もいます。
第二十一条 司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。
これが重要なのですが、司法書士は原則として依頼を拒めません。司法書士の本業が忙しいからという理由なら正当な理由になると記憶しておりますが、本業以外の副業が忙しいという理由では拒めません。
こちらも違反すると犯罪となり、罰せられます。
第七十五条 第二十一条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。
2 (省略)
3 (省略)
かなり重い罪です。
第二十五条 司法書士は、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。
研修を受ける義務と言うのもあります。これは、司法書士に限ったお話ではなく、多くの資格士業には研修を受ける義務が存在します。
その他、様々な義務や制約事項が存在します。登録のハードルは高いのです。私が登録をしない理由は、こうした義務や制約事項に囚われてしまうと、教材の開発に支障が出るからというのもあります。
これから受験しようという方は、試験範囲でもありますので、参考資料の司法書士法と、司法書士法施行規則には一通り目を通した方が良いと思います。
登録費用、維持費用
司法書士登録をする際に費用が発生し、また登録すると維持費用が発生します。具体的な額については、司法書士会によって差がありますが、次の記事を参考にしてください。
司法書士1年目にかかる費用と内訳とは? – あきばれホームページ作成大学
趣味資格ではない
ここまで読んでいただけた方にはもうお分かりかと思いますが、司法書士は趣味で取る資格ではありません。
独立や司法書士として就職することを前提とした資格です。趣味で取ろうとしているなら一度よく考え直した方が良いと思います。
「俺って法律に詳しいんだ!」と自慢したいがために取るというのが、一概に悪いとは言えませんが、その目的で取得するなら司法書士より難易度が低いとされている「行政書士」で十分です。
実は、私は司法書士試験の合格した際に、大学時代の恩師にそれを報告したのですが、報告したそばから「へぇ~、行政書士試験に受かったんだ、すごいね!」と言われました。
要するに、多くの素人の方は司法書士と行政書士の区別が付いていません。また、本当に法律に詳しくなりたいなら司法試験を受験するという選択肢もあります。
司法書士法から勉強するのもアリ
以上、司法書士という資格の使いにくい面や、制約事項、その他、あまり触れられないことについて述べました。
普通なら司法書士試験の勉強は民法から始めますが、これまで読んできた方には、司法書士法も非常に重要な科目だということがお分かりいただけたかと思います。司法書士がどういうものかを知るために、個人的には司法書士法から勉強するのもアリなのではないかと思います。
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