夜分遅くに失礼します。九条です。
前回に引き続き、司法書士という資格の使いにくい面や、制約事項、その他、あまり触れられないことについて触れていきたいと思います。
前回も申し上げました通り、あくまで私が机上の勉強で得た知識、聞きかじった知識、ネットで得た知識を元にして書いており、実務家の方からすると反対意見も有ろうかということを、最初にお断りしておきます。
参考記事
名刺の肩書
前回説明しましたが、司法書士登録をしないうちは司法書士試験に合格していようとも「司法書士」の名称を用いることができません。
そこで問題があるわけです。
「司法書士の実務には興味がないけど、司法書士試験に合格しているというステータスを利用して今の仕事に活かしたい。名刺に司法書士と書けば箔が付く!」
これは司法書士試験をある種の「上級レベルの法学検定」のようなものだと考えている方の思考だと思います。(この思考が悪いとは言いません。)
例えば、フリーランスで仕事を取る際に、司法書士試験に合格しているという事実が有る方が信頼されるかもしれません。
しかし、上記の通り、登録をしないうちは試験に合格していようとも「司法書士」の名称を用いることができません。当然ですが、名刺の肩書に使うのもダメです。よって、試験に合格しただけでは、名刺に「司法書士」と言う肩書を用いることはできません。
では「司法書士試験合格者」のような肩書を用いれば良いのではないかと考える方もいるかもしれませんが、これは紛らわしい名称に当たる可能性があるとの見解があります。(あくまで見解のひとつです。)それに、感じ方は人それぞれですが、「…合格者」という肩書は「ダサい」と思います。
司法書士法第73条第3項
司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
「社内司法書士」は有り得ない
司法書士は司法書士または司法書士法人以外の使用人(雇われ人)となることはできません。
ということは、「社内司法書士」なんてものは有り得ません。
会社に雇われながら、その会社の登記事務をこなしたり、会社の法律に関する問題に対応するなんてことはできません。
「司法書士になって会社で出世だ!」
と考えている方もいるかもしれませんが、不可能です。懲戒処分になる可能性が高いです。
(参考資料)”企業内司法書士”は存在しない。 | 司法女子ハラの旅する秘書ブログ
「会社のオフィスに事務所がある」ことにするという働き方も考えられますが、これも無理がありそうです。会社に雇われていると見做されるかもしれません。せいぜい可能なのは、辞めた会社から仕事を受注するぐらいです。
ただし、司法書士や司法書士法人の使用人になることはできるので「雇われ司法書士」自体は存在します。
「少しずつ司法書士」も有り得ない
司法書士に成るとすると、現職の司法書士補助者を別にすれば、今までの仕事とは全く違う仕事をするわけで、果たしてそれが自分にできるのかどうかが不安になると思います。
これは、雇われの場合も、個人事業主として独立する場合も同様です。
会社を辞めずに司法書士登録をして土日だけ司法書士として仕事をして、平日は今まで通り会社で働きながら、少しずつ司法書士にシフトしていくということを考えた方もいるかもしれませんが、上記の通りそれはできません。
これも懲戒処分になる可能性が高いです。(そもそもの問題として、土日は法務局が営業していないので、土日だけ司法書士として仕事をするというのは現実的ではありません。)
当然ですが、会社員が副業として司法書士を行うことも出来ません。
既に会社で仕事をしている人が司法書士に成りたければ、イチかバチか会社を辞めるという博打に出なければならないのです。
フリーランスとの兼業も職種によっては無理がある
じゃあ、フリーランスならどうかと言う考えをお持ちの方もいるかもしれません。
しかし、フリーランスでも、実質は会社員に近い働き方をしている方も多いです。
例えばITエンジニアであれば、自力で営業が難しいので、営業代行会社に登録をして仕事を取るという場合です。これはフリーランスではありますが、実態としては派遣に近いものとなります。
こうした働き方で兼業する場合も、懲戒処分の対象にならないと絶対には言い切れません。(自力で営業をしていて、契約も請負契約にする等、勤務時間等についても裁量を握っていて、名実ともにフリーランスの方であれば問題ないかもしれません。)
ただし、司法書士と他の仕事を兼業すること自体は認められています。例えば、行政書士登録もしている司法書士は沢山います。
最後に
これまで、司法書士という資格の使いにくい面や、制約事項、その他、あまり触れられないことについて触れてきました。
以上のように、司法書士は使いにくい面がある資格です。これから受験を考えている方は意識をしていただければと思います、
なお、私の個人的な思想としては、このような規定は少々不条理に感じる部分もあり、改正を望んでいます。
本来ならば、司法書士は「登記」ができて「後見」ができて「簡裁代理」ができて…と言うお話から入るのですが、それは次回以降にさせていただきます。
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