司法書士試験は独学で合格できる試験ですか?

Q and A
この記事は約12分で読めます。

質問:司法書士試験は独学で合格できる試験ですか?

本 Web サイトのタイトルとも密接に関係してくる質問です。

おそらく、本 Web サイトの読者様が最も疑問に思うことではないでしょうか?

実は、以前もこのテーマで記事を書いたことがあったのですが、時代に合わない面もあり陳腐化していると思ったため、再度投稿させていただきます。

世間では、司法書士試験に独学で合格するのは不可能に近いと考えられているようです。

結論を先に申し上げますと、独学は可能ですが、あまりお勧めはしません。

独学とは

前提として、司法書士試験の場合、独学に程度問題があります。

人それぞれ独学の定義が異なるのです。

  1. 予備校に1円も金を落とさない完全独学。
  2. 講座を利用せず模試のみを利用する。
  3. 基礎講座を利用しない。

独学を自称する方の多くが2です。私は3で「ほぼ独学」と自称しております。

プロフィール」を参照していただけると分かりますが、私は予備校の講座を少しだけ利用しました。

利用した講座は次の通りです。

  • (伊藤塾)直前パック
    • 択一直前総整理講座(必出3300選の元となる講座)
    • 「うかる!記述式」
    • 模試2回
  • (伊藤塾)プレ模試1回
  • (伊藤塾)口述模試

以下、プロフィールと内容は被ります。

これらの講座のうち、本当に必要だったのは模試だけです。模試以外の講座は、受講したものの合格の役には立たなかったと感じましたし、受講しなくても受講した場合と同じ点数で合格できたと見積もります。そのため、本 Web サイトでは、司法書士試験は独学で合格できるという主張をしております。

模試は必要だと考えていますから、私が可能だと主張している独学は2の独学です。

とは言え、模試が無いと絶対に合格できないとも思いません。1の独学も可能です。ただし、完全独学という名誉が欲しいので縛りを付けているという事情でもない限り、全くお勧めしません。

模試以外の講座は必須とまでは言えないものの、受講した方が良い場合もあります。また、人によっては基礎講座を受講した方が良い場合もあります。詳しいことは後程記事にさせて頂きます。

独学が可能な理由

市販の教材が充実している

結論を先に申し上げてしまいましたが、独学が可能な理由について説明させていただきます。

これは、市販の教材が非常に充実しているからです。本当にこれに尽きます。

実は、司法書士試験ほど市販の教材が充実している資格試験はなかなかありません。

例えば、私は司法書士試験を受験する前、中小企業診断士試験を受験しようとしたことがあります。

私は、仕事で行き詰まったときや、何か新しいことに挑戦するときは、必ず大きな本屋さんに行って情報収集をするのですが、中小企業診断士試験のテキストはとにかく少ないのです。

この市販の教材の少なさでは無理だろうと言うことで、中小企業診断士試験の受験は一旦諦めました。

中小企業診断士試験に限らず、他の資格試験では、独学で行こうとすると、こんな状況に直面します。

  • そもそも、必要な教材が市販されていない。
  • テキスト以外に、様々な実務書を読む必要がある。
  • 実務経験者に有利で、市販の教材で学ぶだけでは難しい。
  • 実習に機材が必要である。

ここでは、私も合格した実績がある、基本情報技術者試験を例に挙げ、他の資格試験の独学の難しさについて見ていきます。

基本情報技術者試験は名前に「基本」と付いていますが、実はかなりの難関試験です。(それでも、最近はかなり緩和されています。)

この記事を読むと、司法書士試験より基本情報技術者の方が難しい試験なのか?と思う方がいるかもしれませんが、あくまでこの記事で問題にしているのは、独学のし難さ、つまり独学の場合と予備校を利用した場合でどのくらいの差が付くのか?であって、試験の難易度ではありません。

分野の異なる資格を一概に比較することはできないのですが、必要な勉強時間の視点からすると、司法書士試験の方が圧倒的に難しいです。

基本情報技術者試験の場合は、独学と誰かに指導してもらえる場合とで大きく差が付きますが、司法書士試験はそれほど大きな差が付かないと考えられる点を持って、司法書士試験の方が独学がし易いと主張しています。

基本情報技術者試験の場合

テキスト以外に、様々な実務書を読む必要がある。

基本情報技術者試験のテキストは市販されていますが、これのみでは合格できません。

テキストの厚さだけを見て、基本情報技術者試験を簡単だと判断する方もいらっしゃいますが、非常に失当な判断です。

基本情報技術者試験の午前は暗記で乗り切ることが可能ですが、午後は深い理解が必要です。

例えば、プログラミングは完全に理解ですし、データベース(SQL)、ネットワーク、セキュリティのような技術的な分野は理解が必要です。

ですが、基本情報技術者試験のテキストはダイジェスト版のようなもので、こうした分野を理解するために必要なことは書かれていません。

現環境ではもう少し分かり易いテキストも出ているのかもしれませんが、私が受験した頃は、基本情報技術者試験のテキストはとにかく難解でした。

誰かに指導してもらえる場合は問題になりませんが、独学の場合はテキストのみでは理解が困難です。

理解をするためには、名著とされている実務書を読む必要があります。この実務書を選ぶのにも苦労します。

実務経験者に有利で、市販の教材で学ぶだけでは難しい。

基本情報技術者試験は、実務を紙の上で行うような試験だと言われます。司法書士試験の記述にもそういう性質が無くはないのですが、司法書士試験の記述は結局のところ択一の延長であり、対策方法としては暗記がメインになります。

一方、基本情報技術者は、その場で考えなければならない問題が出題されます。これは、知識が無くても解けるという意味で楽な面もありますが、単純暗記が通用しない分、司法書士試験よりも頭を使うのです。

基本情報技術者試験は実務経験者に非常に有利にできています。実務経験者が無勉で合格する一方で、何年も合格できない方もいます。

基本情報技術者試験は絶対評価なので、年度によって合格率にばらつきがあります。大体 25% 前後で推移しています。司法書士試験よりも合格率は高く、難易度は低いのですが、一概に比較できない面があります。

というのは、基本情報技術者試験の合格者の多くが実務経験者であるというデータが存在するからです。実務経験無しで受験する場合は、司法書士試験よりも難しいとまでは言いませんが、難易度が跳ね上がるのは間違いありません。

もっとも、私が受験していた頃は、基本情報技術者試験の難易度が高く、現在の基本情報技術者試験はかなり緩和されています。

参考までに、実務経験無しでの基本情報技術者試験の合格率を提示しておきますと、基本情報技術者試験対策のための専門学校に2年通学して、受講生の半分が合格できるかどうかといったぐらいです。

ちなみに、基本情報技術者試験の上位試験に高度情報処理技術者試験があります。こちらは、「実務経験を踏まえたうえで論文を書きなさい。」という問題が出題されます。そのため、実務経験無しの独学で受験することが初めから想定されていませんし、実務経験無しの独学で合格する人は滅多にいません。

※細かいことですが、基本情報技術者試験は受験放棄者が非常に多いことで知られています。司法書士試験の合格率の分母は出願者数を元に語られることが多いですが、基本情報技術者試験の合格率の分母は受験者数を元に語られることが多いです。出願者数を分母にすると 25% よりも更に低くなります。

実習に機材が必要である。

基本情報技術者試験の問題にはプログラミングが出題されます。

プログラミングを避ける方もいますが、プログラミングを全く勉強せずに受験すると、必須科目であるアルゴリズムの問題で失点する可能性が高く、プログラミングを避けることは全くお勧めできません。

プログラミングでつまづく方は多いのですが、プログラミングを学習する有効な方法のひとつはパソコンを使い実際にプログラムを動かしながら実習することです。

これには、パソコンとプログラミングをするためのソフトが必要です。

現在ではどの家庭にもパソコンはありますし、プログラミングをするためのソフトも無料のものが普及しましたが、昔はこれらの機材を揃えるだけでも大変でした。

私が受験した頃は、パソコンは性能面で妥協しても1台20万円ぐらいしましたし、プログラミングをするためのソフトも10万円ぐらいしました。(学割が使えましたので実際はもう少し安いです。)

パソコン20万円+プログラミングをするためのソフト10万円=30万円

機材だけでも予備校に通うぐらいのお金は飛んでしまいます。

パソコンは親に買ってもらいましたが、プログラミングをするためのソフトは買ってもらえず、お年玉を貯金してソフトを手に入れたのを今でもよく覚えています。

プログラミングするためのソフトは無料でも存在しましたが、基本情報技術者試験に出題されるC言語のコンパイラとなると非常に入手し辛かった時代です。インターネット黎明期でしたので、仮に無料で存在したとしても、ソフトのダウンロードに非常に時間がかかります。雑誌の付録から、無料のソフトを仕入れていたのを記憶しています。

私より古い世代だと、パソコンが学校か職場にしか置いていなくて、自宅で実習するということがほぼ不可能だった時代もあると思われます。こうなると、学校へ行くか実務経験を付けることが完全に必須となってしまいます。

司法書士試験の場合

一方、司法書士試験には次のような特徴があります。

  • テキスト以外に、実務書を読む必要が無い。
  • 実務経験者に有利ということが無く、市販の教材で学ぶだけでも合格できる。
  • 実習に機材が必要無い。

テキスト以外に、実務書を読む必要が無い。

予備校を利用している場合と独学の場合の両方に言えることですが、務書を読む必要はありません。必要な知識は全てテキストに書かれています。

必要無いというより、読むと合格が遠のきます。

知識は多いに越したことは無いのですが、実務書を読む時間でテキストを読んで勉強した方が得点に結び付きます。

司法書士試験では同じテキストを何度も何度も読んで完璧に記憶しなければならず、実務書を読んでいる暇はないのです。

実務経験者に有利ということが無く、市販の教材で学ぶだけでも合格できる。

確かに、司法書士試験には非常に実務的な問題が出題され、テキストの知識のみでは正解できないことがあります。

しかし、実務的な問題は多くて1年に1問(3点)です。合格にはほとんど影響しません。

実務経験者に有利な問題を正解するため、司法所事務所に補助者として就職した方が良いのではないかと言う方をたまに見かけますが、全くお勧めしません。

非常に実務的な問題1問を正解しようとすると、テキストをこなす時間が無くなります。基本的な他の問題で失点していては本末転倒です。

それよりも、受験に専念し勉強に充てる時間を多く確保することをお勧めします。

実習に機材が必要無い。

司法書士試験はテキストを読んで、過去問を解いて、ということだけやっていれば受かるので、機材は必要ありません。(もちろん、漫然と読み漫然と解くだけではなく教材の使い方には「工夫」も必要です。)

これ以外に必要なのは、せいぜい文房具です。シャープペン、ボールペン、消しゴム、鉛筆、フリクションペン、チェックテープ等を用意すれば十分でしょう。

記述にしても自己採点でOKです。

確かに、記述については。客観的に採点してもらい、他者と出来栄えを比較しておくということはした方が良いのですが、模試を1回受験すれば十分です。

ただし、司法書士試験に機材が必要無いとは言え、買わなければならない教材の冊数が多く、他の資格試験に比べると独学でもお金がかかるのは事実です。

司法書士試験は独学で合格可能である

世間では、司法書士試験の独学は非常に困難だとされていますが、これまで見てきた通り、司法書士試験は独学で合格可能です。

難易度を抜きに、独学のし易さという点だけで見るなら、司法書士試験の方が、基本情報技術者試験よりも独学し易いです。

私も、完全独学とは言えないですが、ほぼ独学に近い状況で合格しています。

色々と資格試験を受けていますが、司法書士試験ほど市販の教材が充実していて、独学で勉強しやすい資格試験はなかなかないのではないかと思います。

予備校を利用した合格者の方でも、実際に合格してみると、やっぱり独学でも合格は可能ではなかったか?という感想を持つ合格者の方も多いのです。(その一方で、予備校は必須と主張する合格者もいるのは事実です。)

本記事のタイトルは、「司法書士試験は独学で合格できる試験ですか?」となっていますが、個人的な意見を申し上げるなら、「独学でも合格できた」というより、「独学だからこそ合格できた」人、つまり予備校を利用するより独学に向いている人もいると思っています。

しかしながら、私は独学を必ずしもお勧めしません。

独学をお勧めしない理由

詳しい理由は別の記事にしておりますので、ここではさらっと述べるにとどめます。

(参考記事)【司法書士試験】模試との付き合い方

最初にも述べましたが、模試は受験した方が良いと思います。

これは、自信を付けるためです。

司法書士試験は相対評価です。自分が周りよりも出来ていれば合格し、逆にできていなければ落ちる試験です。模試を受けることで、自分が周りと比べてどのくらいの位置にいるかを把握することができ、自信に繋がります。

そして、自信は本試験では重要なものです。

詳しいことは上記の別の記事を読んでいただきたいのですが、模試を受けて自信を付けたことで、本試験ではメンタル面で有利に立ち回ることができました。

また、予備校を利用するメリットとして次のようなものが有ります。

  • 記述の未出の論点に対処する。
  • モチベーションを維持する。
  • 苦手分野を克服する。

予備校によっては、特定の分野に特化した講座を実施しているところがあります。例えば記述限定や、学説問題限定の講座等です。苦手分野がある場合は、こうした講座だけを取得するのも選択肢です。

予備校はあくまでツールです。予備校を利用するのであれば、漫然と予備校の用意したレールに乗っかるのではなく、明確な目的をもって利用しましょう。

司法書士試験は簡単ではない

本記事では、司法書士試験は独学がし易い試験だと主張しました。

しかしながら、独学のし易さと難易度は別問題です。

Q and A」に書いていますが、司法書士試験は3000時間程度の勉強時間を要します。

これほど超時間勉強しないと合格できない試験は他にはなかなかありません。

なので、本記事では司法書士試験は独学がし易い試験だとは主張していますが、司法書士試験が簡単だとは主張しておりません。基本情報技術者試験と比較しておりますが、基本情報技術者試験より司法書士試験の方が簡単だとも申し上げません。ただ、基本情報技術者試験より司法書士試験の方が独学はし易いです。

ここで説明している基本情報技術者は昔のお話であり、最近は緩和されていて、これほど過酷な試験ではなくなっているということもお断りしておきます。

以上、独学を考えている方の参考になれば幸いです。

関連記事

【司法書士試験】独学 VS 予備校

⇐管理人の Twitter を Follow したい方はこちら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました