(レビュー)オートマシステム①

レビュー
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こんにちは。九条です。

今回は、恐れながら司法書士試験のテキストであるオートマシステムのレビューをさせて頂きます。

この記事は続編を書く可能性があるため、『①』としております。

この記事は、私が受験していた当時のオートマシステムのお話です。現在は変更があるかもしれません。それを最初にお断りしておきます。

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司法書士試験にオートマだけで受かるのか?が気になる方は次の記事で考察していますので、こちをお読みください。

○○だけ(のみ)で合格できますか?

また、QandA の「Q.これだけやれば受かるという最低限の教材を教えてください。」もお読みください。

オートマシステムとは

オートマシステムは、TACさんが作成された教材で、カリスマ講師である山本浩司先生の著書です。元々オートマシステムは、山本浩司先生の講義に使う公式なテキストです。

オートマシステムは科目別に11冊の分冊になっています。

  • 民法3冊
  • 不動産登記法2冊
  • 会社法/商業登記法2冊
  • 民事訴訟法/執行法/保全法
  • 供託法/司法書士法
  • 刑法
  • 憲法

前提として、ここでは、あくまで択一式のレビューをさせて頂きます。

記述式については別の記事を立てる予定です。

よく言われることですが、オートマシステムは科目ごとに評価が異なります。これは私も同意見です。

本記事ではオートマシステム全巻に共通するレビューを行います。科目ごとのレビューは別の機会に行います。

オートマシステムの長所

これもよく言われることですが、端的に非常に分かり易いことが最大の長所です。

法律の学習がまったくの未経験な私でも、抵抗なく読み進めることができました。下手な講師の講義を聞くよりは、オートマシステムを読む方が理解が速いかもしれません。

実は、他のテキスト(デュープロセス)も一部購入して読んだことが有りますが、オートマシステムと比べると非常に難しく感じました。

もちろん、デュープロセスが悪いテキストだとは申し上げません。デュープロセスにも固有の長所があると思います。

というか、私はオートマシステムが無ければ、独学で司法書士試験に挑むことに挫折していたかもしれません。独学ならば「オートマ一択」とまで言われることが有りますが。これには私も概ね賛成です。

以下、具体的にどういう部分が分かり易いのかを見ていきます。

文体が独特

他のテキストが無味乾燥なのに対し、本書は有機的と言いますか解説が独特の文体で書かれており、単純に読み物としても面白いです。例えば、刑法の執行猶予の節に出てくる「実刑を食らった!」の一言には爆笑しました。

たまにジョークも出てきます。ジョークと言うと、司法書士法の「私でも登録できた。」が秀逸です。

こうした独特の文体から、勉強をしているという苦行感ががいくらか緩和されてくれます。

ただし、文体が独特すぎるので、個人個人に合う合わないがあるかもしれません。

解説の順序が条文と違う

オートマシステムでは章立ての順序が条文の順序とは異なります。全巻通してその傾向があるのですが、ここでは民法と不動産登記法を例に説明します。

民法

オートマシステムの民法は「即時取得」から入ります。条文では「総則」から始まり「即時取得」は「物権」の章に登場します。法学部出身者にとっては、オートマシステムの解説順序は奇異に感じるそうです。

しかし、法律の初心者にはこの説明は非常に分かり易いのです。

オートマシステムの説明は、即時取得から、物権と債権の違いについて説明し、担保物件の重要性について論じていくという順序を取ります。ここで、全部を説明するのではなく、後で必要になる前提知識だけを説明し、細かい部分は後の章に回すというのがポイントです。

先立って説明される論点は、民法を理解するための世界観と言える部分であり、先にこれらが説明してあることで、その後の理解が飛躍的に早くなります。仮に「意思表示」や「制限行為能力者」等の説明を先に聞かされるとしたら、抽象的に感じられ、理解に時間がかかるでしょう。

不動産登記法

不動産登記法は、総論と各論を分けて解説することが一般的であると思われますが、オートマシステムは次の順序になります。

  1. 総論の一部を説明する。
  2. 各論を説明する。
  3. 総論の残りの部分を説明する。

「総論の一部」とは例えば「登記識別情報」や「利害関係を有する第三者の承諾」です。これらの論点抜きで、各論を学習しても、前提として必要な知識が抜けているので訳が分からないのです。

では、総論を最初に全部説明すればいいのではないかと思うのかもしれませんが、これも分かりにくくなります。

総論の後半は暗記の要素が強いものになります。それを不動産登記法の全容が見えないまま学習すると、全く訳の分からない物を暗記しなければならない学習となり、苦行となることは想像に難くありません。

予備校の場合

条文通りの解説順序による分かりにくさに対しては、予備校も対策をしていると考えます。例えば、講師から学習すべき順序の指定が有ると推測します。あるいは独自のレジュメを作成して、対策している講師もいるでしょう。

オートマシステムの画期的な点は、予備校に依る順序の補正が無くても効率的に学習できるように、最初から解説順序を調整していることです。

予備校の講師の指導が有るのであれば、順序が調整されている点はアドバンテージにならないのかもしれません。そのため、この長所はあくまでも独学を前提とした場合の話だと言えるかもしれません。

短所になり得る

他の多くのテキストが条文の順序を元にしているということは、オートマシステムだけ他のテキストと解説順序が異なることになります。

これは短所になる場合が有ります。というのは、オートマシステムを使う場合、サブテキストや他の問題集と連携が取りにくくなるからです。

オートマシステムを読んだ後に、サブテキストや他の問題集で復習をしたいと考える方は多いと思います。(というか、本 Web サイトでもそのような学習の仕方を推します。)ですが、解説順序の違いからこの学習方法を取るには非常にやりづらい分野が有ります。

本来ならば、テキストを学習した直後にサブテキストで復習する方が知識の定着は良いのです。しかし、オートマシステムを使う場合は、直後に復習できません。これは標準的とは言えない解説順序の所為です。

オートマシステムの1つの章の情報をサブテキストに対応させてみると、サブテキストの何章にもまたがることが有ります。そのため、サブテキストで復習するためには、オートマシステムを一気に何章も読み進めてから復習に入る必要があるでしょう。

これではどうしても、テキストの学習と復習にラグが出来てしまうので、知識の定着を阻害してしまうかもしれません。

思想や世界観が解説されている

法律の背後にある思想や世界観が随所に解説されています。

こうした知識はまったくの未出の肢が出題された場合に、フィーリングで回答するには役に立つ場合が有ります。

私も含め、合格者は未出の肢をフィーリングで正解してしまいますが、完全な勘で回答しているのではありません。思想や世界観に裏付けられた知識により正解させているのです。

例えば、オートマシステムの会社法/商業登記法の巻では会社法の世界観と言うべき部分から解説が始まります。

会社法の判例の問題や学説の問題を捨て問と主張する方もいますが、こういう問題は、会社法の世界観が分かっていれば、正解できる場合があるのです。

定理が記載されている

例えば、不動産登記法の巻に必ず押さえておくべき「定理」として明確に次のように書かれています。

抹消登記は常に主登記。(実際にはもう少し違う文言だったかもしれません。)

これは極めて重要な知識で、これを知っているだけでも正解できる問題がいくつかあります。

もちろん、他のテキストにも「抹消登記は常に主登記。」であることは説明が有ります。私がサブテキストとして使用していた必出3300にもその知識が記載されていました。

ただ、オートマシステムの特徴は「抹消登記は常に主登記。」が必ず押さえておくべき「定理」として明確に説明されていることです。前後の文章のニュアンスもあり、一度読めば絶対に忘れないような「定理」として読者の記憶に焼き付くように書かれています。

一方、必出3300では、他の雑多な知識と同列に並べられており「抹消登記は常に主登記。」がそれほど重要な知識であるということが分かりにくくなっています。

どちらも同じ情報を掲載しているにも関わず、オートマシステムでは最初に絶対に押さえるべき知識が明確に分かるようになっているのです。

オートマシステムの短所

これもよく言われることですが、オートマシステムには短所があるとされます。(しかし、私は必ずしもこの意見には同意できません。)

以下、オートマシステムの短所と言われる部分と、それについての私の意見を述べていきます。

暗記に向かない

同意できます。

「定理が記載されている」ことがオートマシステムの長所であることは述べました。しかし、同時に短所となる場合も有ります。

というのは、司法書士試験では、重要知識だけを押さえれば良いのではなく、最終的にはテキストの内容を何も見なくとも説明できるレベルが求められるからです。

ですから、重要な情報だけを覚えればいいという試験ではありません。オートマシステムでは重要な知識が強調され過ぎるほど強調されているため、読んでいて重要な知識ばかりに目が行きがちになります。

そして、合格に必要な細かい知識を見落としてしまうのです。

そしてこちらが大問題です。通常、参考書で「コラム」と言えば、記憶を助けるために、試験と直接の関係のない実務的知識を載せるのが一般的ですが、オートマシステムでは、合格に必要な知識が「コラム」に載せられています。

オートマの「コラム」にある細かい知識は、定理ほど重要ではないものの合格には絶対に必要な知識です。(これを「コラムが本体」とおっしゃる方もいます。)

オートマシステムを読み込む際には「細かい重要な知識」が隠されていないかに注意する必要があります。これには労力を要します。

他に「コラム」ではありませんが「法定追認」の法律要件が見落としやすい位置にあるという批判を目にしたことが有り、これには私も同意します。

ちなみに私は「細かい重要な知識」を発見する度に蛍光ペンで着色するようにしていました。

情報量が少ない

その通りです。

市販されている他のテキストと比べると、文字のサイズを考慮しても、オートマシステムの方が物理的にかなり薄いです。

しかし、情報量が多い方が常に良いかと言えば必ずしもそうとは言えません。

明らかに試験に出ないような情報を網羅し、適切に絞られていない情報を記載したテキストも問題アリです。

情報量が必要十分であるかどうかを判断するためには、テキストの文字数だけを見ていてもダメです。そのテキストを使用した場合に、ちゃんと合格点を取れたか、本番の試験問題の各肢に照らして、定量的なデータを取る必要があります。

オートマシステムのそのような定量的なデータが公開されていないため、客観的に情報量が適切かどうかを論じることはできません。

定量的なデータを取っていないのでフィーリングでの発言となりますが、本当にオートマのみで勝負した場合、択一基準点を超えることはできるが、逃切点には届かない可能性があるか、またはギリギリになるのではないかという印象でした。

実は、サブテキストに記載されているのにオートマシステムに記載が無い情報も発見しています。通常、メインテキストよりもサブテキストの方が情報が絞られていますから、これは問題だと思います。

また、過去問既出なのに、オートマシステムに記載が無い情報も発見しています。これも問題だと思います。

しかし、私は、情報量が少ないことが明確にオートマシステムの短所であるとは思えません。

情報量が少なければ、他のサブテキストや過去問で補完していけばよいのです。

それから、オートマシステムには、オートマプレミア、オートマ出るトコ1問1答という続巻があります。私はこれらの教材を使用しませんでしたが、これらの情報がオートマシステム本編の情報量の少なさを補う構成なのかもしれません。

先に説明しましたが、オートマシステムは山本浩司先生の講義に使うテキストという位置づけです。山本浩司先生の講義では、情報量の少なさを補うための何らかの説明があるという可能性もあります。

表が少ない

これもその通りです。

明白に表がほぼほぼありません。必出3300選は表の塊なわけですが、それと比べるまでもありません。

さて、表が果たして重要なのかという疑問が有ります。

これについては私は必要だという意見です。

ただし、表を中心にしたテキスト無しで合格している方もいるため、表が必須だという意見は必ずしも正しいわけではありません。

表が少ないことへ対策としては、サブテキストを使うことです。特に必出3300選は分かり易く、有用な表が配置されています。オートマシステムを補完するサブテキストとして、私はこれを推したいと思います。

誤植が多い

これについては同意でき兼ねます。

他の教材(具体的に名前は挙げませんが。)も使用していましたが、他の教材にも誤植はたくさんありました。

少なくとも私には、取り立ててオートマシステムに誤植が多いとは思えません。

仮に多いとしても、誤植については正誤表が公開されていますので、都度それを見ればいい話です。

ちなみに私は、誤植を発見した際は黒のボールペンで訂正を加えていました。

正誤表が無いとしても、オートマシステム以外にサブテキストを用いている場合は、比較して違うところを都度調べて行けば、ほぼすべての誤植は発見可能です。

かなり暴論に思えるかもしれませんが、正誤表を見なくとも誤植を発見できるようになるほどの能力が合格には必要だと思います。

まとめ

総じて言えることですが、オートマシステムを用いる場合は、サブテキストが必須となると思います。それに加えて、情報量の少なさを補うため、過去問題集や条文から情報を拾うことも必要だと思います。

オートマシステムにはいくらか短所がありますが、それを相殺して余りあるほどの長所があるテキストだと思います。

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