質問:司法書士試験の予備校に通うために上京するのはアリですか?
今回はこの質問について回答していきます。
今は、来年度(令和3年度)のほぼ1年3カ月(15カ月)前です。多くの予備校の初心者向け講座が15カ月コースとなっているので、この時期に上京を考えている方がいるかもしれません。
司法書士試験の学習方法は4つに分けることができます。
- 独学(ほぼ独学を含む。)
- 予備校に通学する。
- 予備校に通学せずに通信講座を取る。
- 物理的な校舎の無い通信教育(スタディング等)の講座を取る。
2番目の「予備校に通学する。」を選択する場合、人によっては合格者を多数出している有名講師の授業を受けたいと思う方も多いでしょう。
しかし、有名講師の授業は都会でしか実施されていないことが多く、講義を受けるために上京したいと考える人がいるかもしれません。
今回は、こうした行為の是非について見ていきます。
実は、私も上京することを考えましたが、結論から言うと、よほど財力に余力が無い限り上京はナシだと思います。
前提
本記事では、専業受験を前提に見ていきます。
というのは、上京して通学しようという人は会社を辞めるでしょうから、専業受験になる可能性が高いからです。
それと、独り暮らしを想定します。
家族で暮らしている方は、本記事で紹介する額にプラスで更なる金額がかかります。
予備校の有用性
私は、本 Web サイトにおいて、一貫して次の2点を主張しております。
- 司法書士試験は独学で合格可能である。
- 独学を万人にはお勧めせず、予備校を利用した方が良い。
理由は色々とあり、後程記事にしようと思いますが、これとは別に、通学の方が良いのか、通信の方が良いのかという問題があります。
これについては、通信でも十分だが、人によっては通学のメリットがあると考えています。(これも後程記事にします。)
ですが、通学のために上京するのはナシだと思います。
これからその理由について見ていきます。
審査が通らない
上京しようと思うと、どこかに家なりアパートなりマンションなりを借りないといけません。
これには審査があります。
つまり、貴方がちゃんと家賃を払えるかどうかをチェックされるのです。
予備校に通うために住宅を借りるという動機で審査に通るかどうかは、はなはだ疑問です。
2年制の専門学校や、大学、または大学院に行くために住宅を借りるのであれば、審査は通りやすいと言われています。
もっとも、審査なし(賃貸保証会社無し)の物件もわずかながらありますが、その場合、保証人を立てる必要があります。
頼れる家族がいるならその人物に保証人を頼めばよいです。
稀に、頼れる家族もいないのに上京したいという方がいますが、保証人を頼める人がいないのであればかなり厳しい状況だと言わざるを得ません。
上京するといくらぐらいかかるか?
上京して予備校に1年3カ月(15カ月)通った場合に必要な資金を試算してみます。
家賃
まず、家賃は7万円前後見ておく必要があります。
しかしこれには妥協の余地があります。
東京都外の交通の便が悪い場所に住めば、もう少し安く抑えることができます。しかし、この場合、通学交通費がかかるので、一概にそれが良いとは言えません。
私は、通学時間は、受験をする上で非常にもったいないと思っています。電車内でも机に向かっているのと同じパフォーマンスで勉強できるという方以外には、交通の便が悪い場所に住むことは全くお勧めしません。
ここでは家賃7万円で考えてみます。
まず、住宅を借りるには初期費用が必要です。少なくとも、大体、月の家賃の4倍程度を見ておく必要があります。
7万円×4カ月=28万円
初期費用の内訳としては、不動産仲介料、敷金礼金、賃貸保証料、火災保険料、初月の家賃等が入ります。
敷金は退去時に戻ってくることになっていますが、あまり期待しない方がいいでしょう。
これに更に、退去する際に解約手数料がかかる場合があります。
次に1ヵ月の生活費について考えてみます。
食費
独り暮らしの場合、自炊をしても効率が悪いです。家庭でまとめてたくさん作るからこそ食費を節約できるのです。
食事はコンビニや弁当屋の既製品で済ませることになります。
そうすると、1食当たり500円ぐらいかかります。
500円×3食×30日=4万5千円
もっともこれは贅沢した場合の計算結果です。
3食袋ラーメンにしてしまえば、卵を乗せたとしても大幅に節約することができます。
袋ラーメンは1食100円です。
100円×3食×30日=9千円
もっとも、こんな食生活を1年5ヵ月も続けたら栄養の偏りから体を壊すと思われるので非現実的な試算です。(私は袋ラーメンを否定する気は一切ございません。むしろ、1日に1食ぐらいなら袋ラーメンを食べたくなるぐらいの袋ラーメン好きです。)
次に水道費、光熱費、通信費について考えてみます。
水道費、光熱費、通信費
これは1万5千円以内に抑えることができます。
電気水道ガスは、独り暮らしなら月5千円もあれば十分かもしれません。
あとはスマホ通信費、インターネット回線費ですが、これはあった方が良いでしょう。「講義を休んだときは、ネットで動画を配信しているので見てください。」という予備校は有ると思いますが、その場合は必要になります。その他の情報収集のためにもあった方が良いです。しかし、ネットがあると、かえって勉強に集中できないという方もいるので一概に言えない面があります。
なお、スマホは格安スマホを使えば大幅に浮かせることが可能です。
合計いくらか?
28万円+(7万円+4万5千円+1万5千円)×15カ月=223万円
あくまで、多めに見積もった場合ですが223万円もかかることになります。
なお、個人差が大きいために無視しましたが、これに住民税、国民年金、国民健康保険料がかかります。人によってはこれらだけで、100万円かかるという方もいるかもしれません。
特に住民税と国民健康保険の額は昨年の収入をもとに算定されますから、昨年まで仕事をしていて収入があった人なら、かなり重たい額になることが予想されます。
というわけで、上京して半年間予備校に通学するのに必要な生活費は200万円を軽く超えます。もちろんこれには予備校の費用は含まれていません。
なお、ここでは審査が通ることを前提にしてきました。審査が通らない場合の代替案として1年5ヵ月長期でホテルを借りてしまうという方法があります。
実は、東京都内で1泊3500円で借りられるホテルがあります。住宅を借りるのではなく、ホテルを借りた場合の価格についても試算してみます。
(3千500円×30日+4万5千円)×15カ月=225万円
ホテルの場合、光熱費(インターネット回線費含む)はホテル側が負担するので、計上していません。
住宅を借りるのと同じぐらいの額になりました。審査も無いことですし、こちらがマシかもしれません。
しかし、ホテルを利用するのは現実的ではありません。自宅にある荷物を保管しておく場所が必要なので、自宅が持ち家ではない限り、自宅の賃貸借契約をそのままにしておくか、倉庫を借りてそちらに荷物を移す必要があります。
田舎であれば100万円程度で住宅の売買物件が売りに出ていることがあり、倉庫を借りるよりは、住宅の売買物件をキャッシュで買ってしまう方が安いかもしれません。
以上、計算の結果はあくまで試算であり、正確性を保証するものではありません。上京する場合は慎重に考えてください。
交通費
※この試算には交通費を含めていません。理由があったわけではなく単に忘れていただけです。後で追記するのも面倒なので書いていませんが、実際にはこれにプラスして交通費がかかります。
アルバイトはお勧めしない
よく、生活の足しにするためにアルバイトをしたい、という方を見かけますが、全くお勧めしません。勉強のために上京するのですから、休みの時間も勉強に費やすべきです。
これは、大学生の場合にも言えることで、アルバイトをし過ぎて留年する大学生がいますが、本末転倒だと思います。
通信講座がお勧め
先に述べた通り、予備校は有用なものだと思います。
また、通信教育ではなく通学を選ぶ事にもメリットがあります。
しかし、上京して通学となると、ちょっと現実的とは言えない費用が発生するのです。
なので、通学のメリットは無くはないのですが、個人的には地方に在住の方には通信講座の受講をお勧めします。
最後に
予備校を利用したからと言って必ずしも合格するとは限りません。1年で合格出来ない場合は、更に追加で費用が発生します。
本記事では、独立後の資金は考慮していませんが、独立するには費用が必要ですし、独立しなくても研修を受ける費用は必要です。現実的にはそこのところも考慮する必要があります。
一応、賃貸審査が通りにくいことについては回避するための裏技があります。
住宅の売買物件をキャッシュで買ってしまうことです。ただし、非常にリスクの高い方法なので、全くお勧めできません。
まとめ
予備校は有用だと考えます。
しかし住宅の審査があるため上京しての通学は厳しいと思われます。
もし可能だとしても、1年5ヵ月で生活費が200万円以上かかる可能性があります。
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